人情ものグルメ小説の現時点最新作
今回は、最近読み終わった本のご紹介をしたいと思います。
ホームレスなのに食通で、銀座の一流料理店の店主からも一目置かれるという不思議な男「ヤッさん」の、「食」をめぐるお話で、これがシリーズ5作目になりますが、全部読んでいます😊
ヤッさんシリーズは、市場とそこから食材を仕入れる料理店、市場に関わる人たちの物語です。
東京の市場は、築地から豊洲に移転しましたが、築地の場外のお店のお話や移転問題など、ただの小説に留まらない「お仕事ストーリー」にもなっています。
人生経験豊富な主人公のヤッさんが、色々な問題を「人の力」で解決していくという展開で、読んでいてとても爽やかな読後感が得られますよ。
今回の作品は、下の3つの章から構成されていますが、ちょっとだけ紹介と感想を✨
夫婦の触れ太鼓
ヤッさんの初代「弟子」夫のタカオと、蕎麦一筋に生きていきたい職人気質の妻のミサキは、築地場外の外れに二人の蕎麦店を出しているが、市場の豊洲移転で、客足を心配するタカオが例によって暴走を!?
ヤッさんの登場人物は、魅力的なキャラクターが多いですが、物語の初めは「えっ何で?」ということで始まることが多いです。
タカオもその一人で、「せっかくのお店をどうするつもり!?」とドキドキの展開ですが、ミサキもミサキで・・・
ニューウェイブの調べ
築地場外の卵焼き🧈「玉勝屋」三代目の香津子は、病気の父に代わってお店を切り盛りする修行の真っ只中。そんなとき、無許可で「テンペイロ(ポルトガルの天ぷら?)」の路上販売をする礼音(れおん)に出会う・・・
築地の卵焼きって、とても美味しいですよね😊
市場がなくなっても場外のあの賑わいは残っていくと思うのですが、場外に残ることを決めた人たち、豊洲へ移った人たちの物語、これからのことは!?っていうお話です。
春とび娘
本のタイトルにもなっている今回メインのお話です。
珍しく風邪を引いたヤッさんは、恋仲(?)新大久保で韓国食堂を営むオモニのところで寝込んでいます。そんなとき、表参道の割烹料理店で店長を任されている南里菜から電話が。
里菜を取り上げたドキュメンタリー番組で、「春とびの島寿司」を取材に八丈島ロケをするのですが、そのコーディネート役を引き受けたヤッさんは思うように体が動かず・・・タイミング悪く、オモニの店舗兼自宅のアパートが取り壊す動きも重なって。
というお話になっています。
里菜のお店のオーナーというのがポイントになってきますが、ここでもヤッさんや皆の活躍が、大変痛快で読みごたえを爽やかなものにしてくれます。
本編途中で紹介される島寿司も、東京諸島部の郷土料理だそうですが、文字を読んでいるだけで「美味しそう」ってなります。一度食べてみたいな🍣
原作品はグルメ小説が気に入っています
作者の原宏一さんには、このヤッさんシリーズの他にも多くの作品があります。
中でもおススメは、「食」に関する作品が良いですね。
美味しそうな料理がたくさん出てきますし、表現がとても上手で、すぐに食べたくなります。
市場のことや飲食店の事情なんかも垣間見ることが出来ます。
そして何より、原作品には、食に関わる人への愛情や尊敬の気持ちがしっかりと伝わってくるのが、とても良いところだと思います。
ヤッさんを読んで面白いなと思った方にはこちらがおススメ
ヤッさんと同じくシリーズもので、キッチンカーで移動調理屋の営業をして全国を回る
「佳代のキッチン」
世界的なレストランガイド(ミシュラン?)で格付けのための覆面調査を行うシングルマザーが主人公
「星をつける女」
ひたすらソーセージのお話で埋め尽くされた
「ヴルスト!ヴルスト!ヴルスト!」
などなど、グルメに関する小説はどれも「ハズレなし」の面白さでおススメします😊
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